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10月31日
このミュージカルは、他のとは少し違うような気がする。 それぞれの役の「演者」が替わると、その役の性格までも違ってくる。 特に主役の「Billy」は、それが顕著だ。 私が思うに、大抵の舞台作品というのは ディレクターや、脚本家の意図が一番重視されている。 それは、彼らの作品であり、 役者やもしくはダンサーは、 それを表現する一つの道具なのだと思う。 もちろん、道具の善し悪しで作品の出来は違って来るし 時には道具に刺激されて、作品がより進化することも有る。 でも、基本は、彼らが思い描いている世界を表現するのが「演者」だと思う。 しかし、このミュージカルは、少し違う。 「Billy」を演じる子が替わると、 「Billy」その者の性格が180度変わる事だってある。 約3時間、ほとんど出ずっぱりで 歌い、踊り、芝居の出来る子を探すのは容易ではないだろうし その上、映画の時のように 彼らが思い描く「Billy」を追求してしまったら、 それこそ、このミュージカルの主役は居なくなってしまう。 それに、彼らはまだ子供だ。 どうしても演じる役が、自分に似てきてしまう。 ましてや、彼らに「Billy」のような貧しさや母親が居ないという実体験はない。 3時間演じ切ることを第一目的に置いているのだから 彼らの解釈や表現方法に重点を置くのは、二の次なのかもしれない。 結果、様々な個性のBillyが出来上がってくる。 しかし、それが逆に多くのファンを集める結果となり すべてのBillyを観てみたくて、何度も劇場に足を運んでしまう。 そんなファン心理をついて、 カンパニーも様々な性格や人種のBillyを投入して来る。 悔しいが、私達は、まんまと彼らの思惑に嵌ってしまっている。 それぞれのBillyが素晴しく、愛すべきものだけど 様々な個性のBillyが居るがゆえの不幸も有る。 こんなにもたくさんのBillyを観てきても、私自身が思い描く「Billy」には ほとんど出会えていない。 普通、作品を観る時、自分の観点というのはひとまず横に置いておく。 素の気持ちで作品を味わい、感情移入させて観る。 しかし、このミュージカルに限っては違う。 何度も観たからこそ、私自身の中に、私の想い描く「Billy」が出来てしまい 作品自体を楽しんだり、感情移入させて観るのではなく 「Billy」という役と、それを演じる本人を もっと深いところから観てしまう。 だから、外見やダンスや歌の才能だけでは、 なかなか満足出来なくなってしまう。 今までにも大好きなBillyはたくさん居たし それぞれのBillyに、奇跡と呼べるくらいの いくつもの感動と興奮を味あわせてもらった。 でも、3時間のうち必ずどこかで、フッと我に返ってしまう瞬間があった。 私の想い描くBillyと違った時に、現実に戻されるのだ。 初めて出会ったような気がする。 一度も裏切られる事なく、「Billy」であり続けたBillyに。 Brad Wilson 10月31日、彼の公式ラストナイトを観に行って来た。 同じような感受性を持ち、鑑賞眼、審美眼に絶大な信頼を寄せている 友人達から、観るべきだと進められての渡英。 結局クリスマスまでの土曜日には、彼は舞台に上がる事になったのだけど 私にとっては、最初で最後の彼のBilly。 存分に堪能させてもらった。 お腹がいっぱいで、大満足。 これが、私の観終わった時の率直な感想。 お腹の底から沸き起こるような、 奮えるような何かがあったわけではないが 頭のてっぺんから溢れ出してしまい 納める事の出来ないほどの満足感で体中が満たされた。 こんなにも大きな幸福と、達成感のような 不思議な満足感に満たされたのは、初めてなような気がする。 彼の「Billy」には、影と悲しみがきちんとあるのだけど それだけでなく、家族や周りの人への深い愛情がある。 13歳の彼にとって、あの「Billy」の置かれている 複雑な環境や心境を理解するのは、難しいと思う。 私は、実際の「Billy」も、決してそれらを理解していたとは思わない。 彼は、「Billy」として、その状況に身を置いて解釈しているのだと思う。 子供というのは、私達が考える以上に敏感だ。 政治や社会のせいで賃金が下がり、ストライキをしている大人達の事情や 彼らの葛藤や心情を理解しているわけではないが 子供は子供なりに、大人達の心の動きを察知し、シンクロさせる。 そして、子供なりの愛情で精一杯に愛すべき人達を守ろうとする。 彼の演じるBillyには、その愛情が溢れていた。 特に、グランマやMrs Wへの愛情表現が、本当に愛おしい。 真摯に役に取り組み、Billyその者になって舞台に居る彼の演技は 創られたものではなく、本物として胸に届く。 母を亡くした彼にとって、 ストライキの中、とげとげしている街中の雰囲気から フッと逃がしてくれるグランマの持つ温かさに、 母親の温かさを重ねているのだろうし 母と同年代くらいのMrs Wに、母親への愛を重ねたのだろう。 彼が、彼女達、特にMrs Wに寄せる愛は ふんわりと心の奥を温かくさせ、時に胸を締め付ける。 小さな子供が親にすがるような表現ではなく 彼が彼女達に表現する愛情の影には、亡くなった母親がちゃんと居る。 母を失った悲しみも、同時に見え隠れするのだ。 それが、すごい。 そんな風にBillyの愛情を表現したのは、私の知っている限り彼が初めてだと思う。 Mrs Wに対する演技が、いちいちスゴい。 Born To Boogieとか、アングリーダンスの前とか グッバイシーンとか…本当に思い出すだけで、 胸がぎゅーっと締め付けられるし、頬が緩んでしまう。 でも、それを文字に起こすと、いちいちスゴくなくなる…。 なぜだか分からないけど、そうなのだ。 だから、ここでは書くのをやめる。 私の書いた小さいメモと私の記憶の中だけで残しておきたい。 他の彼の芝居に関して、残しておきたい事を少し。 レターシーンでの台詞。 「Nah, she was just me mum.」 の言い方が、今まで観た中で一番納得出来た。 この台詞、スゴく難しいと思う。 でも、彼の言ったこの一言で Mumは、確かに普通のmumだけど 彼にとっては、世界一のスペシャルなMumなんだよ と言うのが、ひしひしと伝わって来たから。 それと、もう一つ アングリーダンスの前、Tonyに踊ってみせろ!と テーブルの上に乗せられた後の「No.」。 この「間」と表情が、(私にとって)恐ろしく完璧だった。 バレエへの好きという気持ちと それを否定された憎しみと、結局は大人達に押しつぶされて 自分の想いすら遂げられない悔しさと そんな気持ちが、全部込み上げて来る様が グーッと伝わって来る、そんな「No」。 あ、あと好きだったのが 初めてピルエットやシェネの時の首の付け方を教えてもらうとき。 彼の、バレエへの興味が一気に湧く。 そして、その魅力にどんどん惹き込まれていく心情が 手に取るように伝わって来た。 うまい。と思った。 それから、オーディションのシーン。 ロイヤルのスタッフに対する少し横柄な態度。 彼が、無骨なマイナーの息子であり そんな男達ばかりの田舎町から出て来た 決して上品ではない男の子だという、表現の仕方が良い。 面白い。 本当に彼の解釈は、私に「Billy」がそこに居る事を信じさせてくれる。 彼のBillyは、色んな事を経験して この3時間の中で確実に成長する。 初めの頃に見せていた、少し不安そうな表現も 最後のLetter Repriseの後には、母親への気持ちや この町への気持ちも少し整理がつき 前へ踏み出そうとしている、少し大人になった表情へと変わる。 3時間という時間の中で、 彼の見せてくれた、Billyの人生の一部は ずっしりと私の中に落ちていった。 歌やダンスでストーリーが途切れてしまう、ミュージカル。 でも、彼の演じたBillyは、一度も私を現実に戻す事なく この作品の世界にどっぷり沈み込ませてくれた。 彼が、Billyそのものになっていたからだと思う。 それは、ダンスでもそう。 実は、映画のBillyでさえ私は現実に戻された。 あのジェイミーの踊りで、どうしてロイヤルバレエに合格出来よう。 どんなにこれが映画であろうと、フィクションであろうと あのダンスでは、ありえない。 ましてや彼が、アダム・クーパーになるなんて…。 本当に、ありえない。 でも、BradのBillyは、そこさえも信じさせてくれた。 例えば、Liam。 彼のスキルやその頃持っていたポテンシャルがあれば、 ロイヤルバレエの門を叩けるだろう。 それと、Matthew。 彼ら2人のダンスは、その先にある何かを感じさせてくれた。 彼らのダンスには、観ている者の心を動かす何かがある。 体だけではなく、心で踊り、彼らその者がダンスになる。 そんな、何十にも広がる何かを彼らのダンスからは感じられる。 彼らは、踊る事で 彼らの周りの空気の色や温度さえ変える。 重みの有る、空気の波動が観ている我々にもズーンと伝わって来る。 ラインが綺麗とか、ポジションが正しいとか そういった見た目ではなく、もっと奥の方のもの。 Bradには、彼らに近いものを感じた。 一度しか観ていないし、胸を突くような衝撃はなかったけど 彼のBillyがロイヤルに合格するくらいの ポテンシャルの有るダンサーだということは、 信じられる。 こんなにも、すべてが揃ったBillyに出会ったのは初めてだ。 すごい。 ただ、それだけ。 もう一度観られるなら…。 本当にそう思うけど、叶いそうにはない。 悔しいけど、仕方がない。
by rinamizo
| 2009-11-30 15:13
| ビリーエリオット
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